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東京地方裁判所 昭和37年(ワ)7723号 判決 1964年5月28日

原告 仏乗院

被告 国

国代理人 川本権祐 外二名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事  実 <省略>

理由

一、東京都港区芝三田南寺町二番地の二宅地二四坪二合九勺(以下本件係争地と称する。)が被告の所有であつたことは当事者間に争いがない。

二、原告は本件係争地の所有権を時効により取得したと主張するので判断するに、原告が明治三一年七月一六日以後昭和四年頃まで本件係争地を占有していたことは当事者間に争いなく、原告代表者尋問の結果により、原告は昭和四年頃以後現在に至るまでもなお本件係争地の占有を継続していることが認められる。ところで本件係争地を含む港区芝三田南寺町二番地四〇六坪七合三勺(以下単に二番地と称する。)は従来から原告の寺院敷地であつたが、明治初年の官民有区分により官有地第四種へ編入され、その後内務省の所管するところとなり寺院明細帳にも官有地である旨記載されていることは当事者間に争いがない。右事実により原告はその境内である二番地が被告所有であることを承認のうえ、これを使用占有していたことが推認され、従つて原告は二番地を占有するにつき、所有の意思を有しなかつたものと認められる。そしてそれ以後原告が被告に対し所有の意思あることを表示し、または所有の意思を認むべき新権原を取得したとの主張立証の存しない本件では原告の占有はその性質を変じることがないのであるから、原告は本件係争地を時効取得するに理由がない。

三、よつて原告の主張は結局理由がないから、本訴請求を棄却すべきものとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 吉岡進 荒木大任 竜岡稔)

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